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「天下分け目の関ヶ原」はあったのか

      2018/07/25

一般に「天下分け目の関ヶ原」と言われますが、合戦直前まで誰も関ヶ原が天下分け目の戦場になるとは思っておらず、直後もあの戦闘が天下分け目だったと受け止めていなかったのではないでしょうか。
4月25日発売の共著『天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった』のタイトルには、そうした問いが含められています。
改めて見直してみると──一般書の歴史本で著者がタイトルを決めることはあまりなく、わたしもほとんど関与していませんが──内容をよく吟味してつけられていると思います。読む前と読んだ後ではタイトルへの印象も異なるでしょう。

本書では、五大老と五奉行に豊臣秀吉の遺言を守る意思がどこまであったのか、家康の私婚問題は本当に裁かれたのか、七将襲撃事件は何を目的としていたのか、直江状は実在したのか、関ヶ原合戦を当時の史料や証言だけで組み立て直すと何が見えてくるのか、などの諸問題に正面から取り組みました。
再検証に際して、共著者の高橋陽介さんは「関ヶ原で本当に決戦があったのか」という、ぶっ飛んだ発想から取り掛かり、わたしも「家康たちの使者は本当に西笑承兌の書状を携えていたのか」という当たり前のことを疑うところから、史料を見直していきました。その仕事はこれまでになく刺激的で、たいそう面白かったです。

なにが出たかは、読んでからのお楽しみに。

本書に触れるみなさんにも、「豊臣公儀とはなんだったのか」「だれがこんな創作を加えたのか」「家康を動かしたものはなんだったのか」という、大小さまざまの問題について考えてもらえれば本望です。

歴史書に慣れてなくても、ミステリーものを読むような感覚で楽しめると思います。読後のネタバレをどこまで可とするかは、みなさんのセンスにお任せします。

『天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった』(河出書房新社/ISBN:978-4-309-24860-8)は4月25日発売です。

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