天下静謐 – 乃至政彦Webサイト

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歴史家たる営為とそのごく私的な動機

      2023/05/06

誰に頼まれるわけでもなく、令和の世に歴史のことをやっていることについて。

私は令和前後から人間、歴史、社会への関心が急に薄くなってしまった。いずれも真ん中は虚空であり、空っぽだという感覚が身体のうちに染み付いてしまっている。

何かを主張したいという衝動も、人を説得したいという欲望も、以前と比べて驚くほどない。

ただそうして生きていた記憶は残っており、かつて精神的により人間らしかった過去の自分のイミテーションであることはできる。

現在は歴史家なるものを自称することで、誰も見ていない過去の「真実と信じられるもの」を探り出し、これを表に出す営為に携わっている。こうすることで、主張の発見・発表意欲・さらなる興味の広がりというサイクルを取り戻したいと言うのが、今も歴史の史料に手を突っ込んで、あれこれいじりまわす動機のひとつである。

こういうごく私的な理由から歴史業の末席に名を連ねているが、自分が人間らしい衝動を取り戻す方法をほかに探し出すことは難しいと思うので、このままやれるところまで適当にやっていくだろう。

「みんなにこれを訴えたい」と思うほど、人間や歴史に惹きつけられたい。

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