天下静謐

nice! – 乃至政彦Webサイト

ネットレビューの読み方と書き方

   

ネットレビューは「☆の数が多ければ、すなわち良著」というわけではありません。

わたしなどは、☆が満点で並んでいる作品を逆に敬遠することがあります。
すでに高い評価を得ている本をどうして読む必要があるのかと天邪鬼な気持ちが起きてしまうからです。たとえばこういう遊びをやったことがあります。☆最低点のレビューしか見えない作品を探しだし、それを読み込んだ上で☆満点をつけ、率直な感想を記したあと、数日間寝かせておくのです。すると不思議なことに、再びレビューページを開いたときにあとから投稿されているレビューは☆が多めにつけられていきます(もちろんそうはならないこともある)。レビューにおけるオセロゲームのコツは、読んだときにお得感になれる情報を感想文に仕込むことです。うまく行ったときには、まったく人間とは単純なものだぜ、HAHAHA……な気分になれて爽快極まりありません。お断りしておきますが、知人や友人の書いた作品でこれをやったことはありません。皆さんわたしがレビューする間でもなく読者に好評なものばかりお書きになりますからね。

わたしが一時期こういう遊びに興じたのは、ネットのユーザーによるレビューの妥当性に不審をもっていたからです。20歳前後のころ、中二病のようにゴッホに入れ込んだことがあるのですが、彼の作品は生前、まったくと言っていいほど評価されませんでした。おかげで収入もほとんどなし。極貧生活を余儀なくされたゴッホは弟テオの仕送りを頼りに生きていましたが、最期は絶望の果てに自殺してしまいます。ところが死後、どうしたものやらゴッホの名声は急上昇。あっと言う間にもし当時にAmazonがあったら、いつも点数☆1つ程度の酷評しかつかない惨状から、一気に☆数5つどころですまない、歴史的な天才画家として爆発的な追悼評価を得たことになります。この話にわたしは「生きている作品」への評価は無責任にはできないと思ったのでした。

それに人の書いた評価をそのまま受け入れて「☆満点ばかりだから傑作」「☆最低点ばかりだから駄作」と結論付けるのは、本の良し悪しを自分で見定める力が自分にないと宣言してしまうようなものです。ほかの人のレビューは参考になりますが、答えにはなりません。

また、☆の数を定めるのも最後にするか、最初にするにしても最低点か満点にするのが望ましいと思います。

だいたい中途半端な点数をつけると、レビュー本文が点数の理由説明に終止しがちです。「ここは惜しかった」「ここが好きになれなかった」として、つまるところ個人の主観で好悪を表明するにとどまってしまう恐れがあります。果たしてあなたの感想は本当にネットのシステム(点数付け)で言い切れるものなのでしょうか。生きている人間が生きている人間に点数をつける、キャラクターに点数をつける、古典に点数をつける、個人的にはあまり好きではありません。点数をつけるのはコーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲームまでかなと思うのです。

パッケージ(世間の受け)だけを判断基準にしていては、本当に大事なものを見落としてしまいます。作品の価値を定めるのは誰でもなく、あなたです。臆することなくおのれの思うまま、絶賛なり酷評なりを書いてしまえばいいのです。

レビューは対象とあなたの物語のゴールではなく、スタートになります。

 - by乃至政彦