天下静謐

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ノアの箱舟に乗らない自由

   

最近、新刊に関する話ばかりしてきたので、ここでまったく無関係な昔話でもひとつ。

20年ほど過去のことですが、職場の同僚から飲食に誘われたことがあります。車を出してくれたのはいいのですが、ついたところは飲食店ではなく何かの会場。マルチ商法の集会でした。

卑劣なやり方だと思いましたが、誘った本人に悪気はありません。彼の頭は、この商法で一緒に美味しい人生を満喫しよう、大変な労働から救済してあげようという善意に支配されていたからです。わたしは彼の人の好さに心打たれる思いをしましたが、商談には乗りませんでした。

マルチ商法が儲かるか儲からないかはわかりません。うまくやれば、ほぼ確実にお金持ちになれるひとつの方法なのかもしれません。仮に十中八九儲かるとしましょう。しかしそれでお金持ちになれたとしても、それは「普通に儲けた人」ではなく、「マルチで儲けた人」になってしまいます。それが悪とはいいませんが、わたしはそこから生じるだろうストレスに耐える自信がありませんし、そもそも普通に生きていても普通でないので、普通を好む人から乖離する人生設計はなるべく避けたいのです。もちろん裕福な生活には憧れますが、その引き換えとなるものが自分の価値観にあわなければ、どれだけ大儲けしようとも幸せにはなれないと思います。

だから、わたしは明らかなマルチ商法や一部の新興宗教で救われたいとは思いません。人の善意そのものは愛しますが、時として天国への階段を望まない自由だけは堅持させてもらいます。

ちなみにわたしが宝クジを買わない、ギャンブルをしないのもこれと同じです。決して負けたら悔しいからではありません(笑)。

 - by乃至政彦