副読推奨本
2016/01/22
『戦国の陣形』を書き上げるにあたり、参考にさせていただいた好著は多くありますが、あわせて読むと面白さが8倍増す8冊を選んでみました。
西股総生先生の『戦国の軍隊―現代軍事学から見た戦国大名の軍勢』。
兵種別編成論を議論の俎上に上らせた画期的名著。拙著は西股先生への密かなるラブレターのつもりでもあります(ローラ姫のような赤面)。
戦国怪獣コウギロンと呼ばれし久保健一郎先生の『戦国大名の兵粮事情』。
当時の兵糧には軍事食料と擬似貨幣の両面があり、また単なる食料が兵糧へと転化されることの恐ろしさにも触れています。飢餓が当たり前に蔓延していたとする戦国時代へのイメージも変わります。
歴史小説界の大家・伊東潤先生による『城を攻める 城を守る』。
戦国時代の戦いは城戦と野戦。伊東先生は自ら散策した城が有する戦いの歴史を独自の視点から物語ります。類書に見られないするどい洞察力は作家ならではでしょう。
そして、今や大河ドラマの時代考証で知られる平山優先生の『検証長篠合戦』。
戦国の合戦像を文献史学の立場から精緻かつ大胆に掘り起こした重厚な研究書。とはいえ読みやすく、値段もお手頃。信長・武田の合戦論に欠かせない一冊です。
関ヶ原合戦論でいま最もホットな白峰旬先生の『新解釈 関ヶ原合戦の真実』。
これまでの関ヶ原合戦論は、これで通用されなくなりました。直江状、小山評定にはじまり、関ヶ原の布陣図や問い鉄砲への疑義まで幅広く、しかも明快な論理で再考を迫っています。
鈴木眞哉先生の『「戦闘報告書」が語る日本中世の戦場』。
これまで戦闘合戦論を主導してきた在野のれ研究者である鈴木先生の最新作。題名通り確実なデータでどこまでの情報を引き出せるかに真正面から取り組んでおられます。
ここからは少しお高くなりますが、学術書では長屋隆幸先生の『近世の軍事・軍団と郷士たち』、藤田達生編『小牧・長久手の戦いの構造 戦場論 上』および『戦場論 下』を一押しします。世には「3時間で読める!」「丸わかり!」といった初心者向けの合戦論が山のようにありますが、ここをご覧になるほどの皆さんは、それでわかったつもりになれない病気に悩まされていると思うので、処方箋として強く推薦いたします。最新の研究では、確実な軍事史料を手堅く扱いながら、ここまで史実に迫ることができているのを直に体感してみてください。
先行研究と最新の研究を見渡した上で『戦国の陣形』の位置付けを定めてくだされば、幸甚至極に存じます。わたしは自分の理解が正しいと考えていますが、本当に正しいかどうかを決めるのはわたしではありません。
よろしく!